ノーコードでAIエージェントを構築できる「Dify」を使えば、プログラミング不要で社内業務に特化したAIアシスタントをすぐに作り始められます。
ChatGPTのような汎用AIは便利ですが、「自社の規定に沿って回答させたい」「社内マニュアルをもとに質問に答えさせたい」といった用途には少し工夫が必要です。そこで注目されているのがDifyです。Difyはオープンソースのノーコードプラットフォームで、プロンプト設計・RAG(文書検索)・ワークフロー自動化までをGUIで構成できます。
本記事では、Difyのクラウド版を使って「社内FAQに答えるAIエージェント」を最短手順で作る方法を解説します。初期設定からドキュメントのアップロード、チャットボット公開まで30分以内に完成します。
この記事でできること
- Difyのアカウント作成とワークスペース初期設定
- 社内マニュアルや規定をナレッジベースとして登録
- RAGを活用してドキュメントに基づいた回答を生成するチャットボットの構築
- チャットボットを社内向けに公開(共有リンク生成)
事前準備
以下を用意してください。
- Difyアカウント(
dify.aiでメールアドレス登録、無料プランで本記事の手順はすべて実行可能) - AIモデルのAPIキー(OpenAI GPT-4oもしくはAnthropic Claude推奨。DifyのSettings → Model Providerで登録)
- ナレッジとして使うドキュメント(PDF・Word・Markdown・テキストファイルなど)
DifyはクラウドホストのSaaS版を利用します。自社サーバーに自己ホストすることも可能ですが、本記事ではクラウド版で進めます。
STEP 1: Difyにログインしてアプリを新規作成する
ブラウザで dify.ai にアクセスしてログインします。ダッシュボード左上の「Create App」をクリックし、アプリタイプに Chatbot を選択してください。
- App Name: 例)社内FAQ AIアシスタント
- Description: 例)社内規定・マニュアルをもとに質問に答えるAIです
「Create」ボタンを押すとアプリ編集画面(Orchestrate画面)が開きます。中央にチャット画面のプレビュー、左側にコンテキスト設定パネルが表示されます。
STEP 2: ナレッジベースを作成してドキュメントを登録する
左メニューから「Knowledge」→「Create Knowledge」をクリックします。ナレッジ名(例:社内マニュアル)を入力して「Create」を押した後、ドキュメントのアップロード画面に進みます。
「Upload File」ボタンから社内ドキュメントをアップロードします。PDF・DOCX・TXTなど複数ファイルを一度にドロップ可能です。アップロード後の設定は基本的にデフォルトのままで構いません。
- Chunk Size: 500〜800トークン程度が標準。文書が長い場合は大きめに設定
- Embedding Model: OpenAI text-embedding-3-smallが高精度でコスト低め
「Save & Process」をクリックするとドキュメントの分割・ベクトル化が始まります。ファイルサイズによりますが数秒〜数分で完了します。
# ドキュメントが多い場合のヒント
# Dify APIを使ってプログラムからバッチアップロードも可能
# curl -X POST https://api.dify.ai/v1/datasets/{dataset_id}/document/create_by_file # -H "Authorization: Bearer YOUR_API_KEY" # -F "data={"name":"マニュアル","indexing_technique":"high_quality"}" # -F "file=@manual.pdf"
STEP 3: チャットボットにナレッジを紐づける
アプリ編集画面に戻り、左パネルの「Context」セクションで「Add」ボタンをクリックします。先ほど作成したナレッジ(社内マニュアル)を選択して追加します。
次に「Instructions」(システムプロンプト)を設定します。以下のようなプロンプトを入力してください。
あなたは社内規定・マニュアルに関する質問に答える社内AIアシスタントです。
以下のルールを守って回答してください:
- 提供されたドキュメントの内容に基づいて回答する
- ドキュメントに記載のない情報は「資料に記載がありません」と伝える
- 回答は日本語で、丁寧かつ簡潔に行う
- 必要に応じてドキュメントの該当セクションを引用する
プロンプトを入力したら右側のプレビュー画面でテスト送信してみましょう。ドキュメントの内容に沿った回答が返ってくれば設定成功です。
STEP 4: 公開設定と共有リンクを生成する
テストが完了したら、右上の「Publish」ボタンをクリックして公開します。公開後に表示される「Share」メニューから以下の形式で共有できます。
- Embedded in website: HTMLのiframeコードをコピーして社内ポータルに埋め込む
- Share link: URLを発行してブラウザで直接アクセスできるようにする
- API Access: APIキーを発行して他システムと連携する(Slack・Notionなど)
社内向けに公開する場合は「Share link」のURLを社内チャットやメールで共有するのが最も手軽です。アクセス制限(パスワード保護)もDifyのWeb App設定から有効化できます。
STEP 5: 応答品質を改善する(チューニング)
公開後に回答精度を上げたい場合は以下の設定を調整します。
- Retrieval Setting(ナレッジ設定): 「Top K」を3〜5に設定すると関連チャンクを複数参照して精度が上がる
- Score Threshold: 0.5〜0.7に設定すると関連性の低い情報を無視できる
- Rerank Model: Cohere Rerankなどを有効にするとさらに精度が向上
また、「Logs & Annotations」メニューから実際の会話履歴を確認し、誤回答があった場合はアノテーション(正解例の登録)を追加することで継続的に改善できます。
うまくいかないときのチェックリスト
- □ ドキュメントのインデックス処理が完了しているか(Knowledgeメニューでステータス確認)
- □ APIキーが正しく登録されているか(Settings → Model Provider)
- □ ナレッジがアプリに紐づいているか(Orchestrate画面のContextセクション)
- □ システムプロンプトに矛盾する指示がないか
- □ アップロードしたファイルが文字化けしていないか(スキャンPDFは文字認識が必要)
- □ モデルの利用上限に達していないか(OpenAI/Anthropicの使用量を確認)
応用・発展
基本的なFAQボットが完成したら、以下の発展活用を検討してください。
- Workflowアプリ化: 単純なチャットではなく、入力→処理→出力の複雑なフローをノーコードで構築可能。例えば「テキストを受け取り要約してメール文を生成→Slack送信」といったパイプライン
- SlackBot連携: DifyのAPIとGASまたはSlack Appを連携させて、Slackから直接AIエージェントに質問できる仕組みを構築
- 複数ナレッジの組み合わせ: 部門別・製品別にナレッジを分けて作成し、チャットボットで動的に切り替えることも可能
- 自己ホスト(セルフホスト): Dockerで自社サーバーに展開すれば、社外にデータを出さずに運用できる(オンプレミス対応)
まとめ
- Difyのクラウド版を使えば、プログラミング不要で30分以内に社内AIエージェントを作れる
- ナレッジベース機能(RAG)により、自社ドキュメントに基づいた精度の高い回答が可能
- 公開方法は埋め込み・共有リンク・APIの3種類で用途に合わせて選択できる
- ログ・アノテーション機能で継続的に回答精度を改善できる
- 慣れてきたらWorkflowアプリやSlack連携など発展的な活用も視野に入れよう
